「癌告知後の医療、看護についての優れた一書--アメリカの癌医療に関する記述には疑問も」 おすすめ度:
投稿日:2005-05-03
この本の著者、季羽倭文子さんは、ホスピスケアに精通した看護師である。本書は、著者のそうした経験と学識を反映して、癌告知を巡る様々な問題を、詳細かつ具体的に述べた、内容豊富な一書と成って居る。医学用語を、誰にでも分かる様な平易な言葉で説明して居る事や、癌患者の食生活について、著者が良いと思ふ調理法を詳しく書いて居る点などからは、看護師であり、女性である著者の人柄と経験が伺える。非常に優れた本であるが、アメリカの癌医療を紹介する部分では、アメリカの医療の問題点に十分触れず、アメリカで行なはれて居る事を、少々美化し過ぎて居ないか?と言ふ疑問を持った。具体的には、例えば、本書で紹介されて居る様なアメリカでの癌患者への医療と看護が、患者とその家族にどれ位の経済的負担を強いて居るかを、語って欲しかった。そして、本書が、その題名から伺える通り、癌告知が為される事を半ば前提に書かれた事は理解出来るが、その癌告知が、患者と患者の家族の人生にとって、必ずしも肯定的な側面ばかりを持つ訳ではない事にもっと触れて欲しいかった。即ち、本書は、癌告知の持つ負の側面について十分触れておらず、その点が、医師である私には疑問であり、不満であった。医師として、私は、日本の看護師たちが、しばしば、アメリカの医療、看護の在り方を、余りにも美化して居ると感じる事が有る。経験豊富な、患者思ひの看護師である著者の記述にも、そう言ふ点が少々感じられた事は、本書が、優れた本であるが故に、残念であった。(内科医)