「野球界のプロジェクトX」 おすすめ度:
投稿日:2005-02-11
この本は、野球界で普段脚光を浴びる機会の少ない裏方の人にスポット
ライトを当てた本です。審判、トレーナー、グランドキーパー、ブルペ
ンコーチ、グラブメーカー、スコアラー、スカウトの人たちの仕事ぶ
り、悩みなどがわかって面白かったです。特に面白かったのは、グラン
ドキーパー、ブルペンコーチ、グラブメーカーの3人の物語が良かった
です。
グランドキーパーの章は、阪神のグランドキーパー辻啓之介という人
の話です。日本で一番酷使されるという甲子園球場をどのように管理し
ているのかがわかりました。土に含まれる水分まで管理しているとは驚
きでした。
グラブメーカーの章は、「ハタケヤマ」という零細ブランドの物語で
す。プロ野球選手というのはたいがいが大手のメーカーと契約している
のですが、そういう選手たちが甲の部分のマークを張替えてまで「ハタケ
ヤマ」のグラブを使いたがるという、それほどまでにすばらしいグラブ
がどのようにできていったのかがよくわかります。
野球好きの人はもちろん、プロジェクトXが好きな人にもおすすめです。
「読みごたえある好著/舞台裏のプロを泣かせるな、オ-ナ-諸君」 おすすめ度:
投稿日:2004-12-17
プロ野球になくてはならない、しかしスポットライトを浴びることはなく、多くの場合その存在すらファンの意識にのぼらず、黒子に徹している人たち。彼らもまた筋金入りのプロであり、プロゆえの譲れない熱いものを秘めた人たちである。彼らのドラマを淡々と、しかし堅実に描いたこの本には、彼らの思いと共に、野球場の雰囲気がぎっしりと詰まっている。グランドを流れる雲や風、土の匂い(天然芝の球場ってやっぱりいいですよね)、アンパイアの声、バットの音、キャッチの音、選手やコーチの声、…人間臭さに溢れたあの楽しさを支えてくれた男達。近鉄バッファローズの合併消滅という未曾有の年に本書を上梓した著者の思いも伝わってくる。選手も裏方もひたすらに野球のことを考えていられるように、オ-ナ-たちよ恥じて更に奮起せよ。
「ヘミングウェイみたい。」 おすすめ度:
投稿日:2004-11-13
日本のスポーツノンフィクションの中で、ここまで情緒的でない作品は珍しいと思う。
読み終えた後、なんだか落ち着かない気分になった。プロ野球界の「裏方」を描いて野球好きにはたまらない本なのだけど、ありがちな情緒とか安易な物語とかとは隔絶していて、それぞれの章を読み終えても全くカタルシスがない。要は、泣けない。読んでいる自分の感情に落としどころが無い。でも、深い余韻が残る。その余韻は、硬い金属片のように胸に残る。
この感じは何かなーと考えて、思い至ったのがヘミングウェイだ。ちょっと大げさだけど。でも例えば、甲子園球場のグランドキーパーを描いた一遍を読んだ時、確かにそういう感触を持った。甲子園の「土」と「雨」に対峙する主人公に。こんなスポーツノンフィクションは、今までなかったのではないか。こんなふうに野球と、それに関わる人々の全体像を表現する書き手があらわれたのかと、ちょっとびっくりした。