「観るべき野球」 おすすめ度:
投稿日:2007-05-06
この本を読んだ時の 爽快感を伴った衝撃は今でも 体のどこかに残っている。
草野進というペンネームで 野球評論に挑んだのが 蓮見重彦である。蓮見の映画評論は 確信犯的な「日本語難文」もあり いささか読みにくいが 本書の蓮見の日本語は明快であり快刀乱麻であると言ってもよい。
凡百の野球評論が 野球技術、もしくはベンチの判断といった内容でしかないのに対し 「観るべき野球」という視点で 野球の断面を切りとった点に最大の目新しさがある。例えば三塁打やホームスチールへの 官能的な魅力であるとか 乱闘に関する賛美であるとか それまで そんな事を僕らの側で言ってくれる人はいなかったのだ。
一部 新庄のような選手が 本能的な直感で 「観るべき野球」を目指したことは確かだが新庄の場合には いささか奇をてらっている点で「弱い」。その点 蓮見の指摘する野球の魅力は 言われてみると実にオーソドックスなのだ。
蓮見の野球評論の再開を祈っている。
「元東大総長の野球論」 おすすめ度:
投稿日:2005-05-18
元東大総長 蓮実重彦氏。世間では東大の入学式で韜晦な祝辞が話題になった事が記憶に残るぐらいの方だが、文芸評論では日本の権威。独特の蓮実節で映画評論も手がける。そんな蓮実氏がプロ野球評論では「草野進」のペンネームを使っている。一時期は草野さんは美人華道家などという流言まででた。
本書は野球ファンにとっては異質なスポーツ評論であろう。山際淳司氏や玉木正之氏のようなスポーツライターの描く読み物とは異なる。野球を語る中で時々あらわれる、蓮実氏のオリジナルの詩のような表現が、ホームランの後の余韻のように心に残る。
スポーツと読書が趣味の読者にお奨めである。