「自信を持って星一つ」 おすすめ度:
投稿日:2007-11-08
著者が提唱する『がんもどき理論』を柱として、様々な医療の問題点を述べている。平易な日本語で広い読者層を対象としている。
本書を語る前に、自分に都合のよい事例ばかりを強調して自説の正当性を訴えることを確証バイアスという。また、結果を見てあとからどうとでも言えるように前提をつくっておけば、どんな予言もはずれることはない。
氏のすべての著書に共通する争点はただ一点、『がんもどき理論』が正当な理論であるかどうかであろう。それが癌に対する標準治療を行っている病院や医師を糾弾する根拠になっているからであり、それ以外の記述は他の医療問題を扱っている書を参照した方がよい。結論から言うと、氏の理論はカルト宗教レベル以外の何ものでもない。がん医療の背景には『患者に対する診療方針の根拠が確率論でしか語れない反面、治療が適切であったかどうかは結果論でしか語れない(一人の患者には治療をするかしないかどちらか一方しか選択できず、比較ができない)』ため、都合の良い事象だけを強調して好き放題の理論を振りかざすことが可能である。治療が有効だった患者には『あなたはがんもどきだったから』といい、無効だった患者に対しては『治療しない方がましだった』と結果だけを見て都合良くつじつまを合わせる手法はカルト宗教の詐欺と同じ手口である。結果を見てから前提を当てはめることが許されるなら最強だ。
しかし、『先進国で最も多い死亡原因が(進行)がんである』『進行癌には必ず早期癌の時期が存在する』『早期癌は切除すればほぼ治る』『進行癌でも治療によって治ったヒトが大勢いる』『進行癌で治療しないで治った人はいない』『進行の早さには個人差が大きい』『早期癌の性質は形態では判別しづらい(ある程度は可能)』『再発癌でも適切に治療できた場合は再再発しない事例も多い』『適切な治療を中止した直後に再発する症例がある』『がんと確定診断され未治療で30年以上そのままの形態を保っていた症例はただの1例も報告されていない』などを氏の理論ではすべて矛盾なく説明することは不可能である。部分的には説明できたつもりでいるようだが、確証バイアスによる理論であるために、全体をみると明らかに矛盾する。先の『治療の正否は結果論でしか語れない』という事情を逆手にとって、何とでも言い訳ができる(癌研究が急速に進歩しない限り責任を取らずに済む)しくみを悪用しているに過ぎない。他のレビューをみても明らかなように、自身で検索したり、論文を集めて検証できない読者が毒され高い評価をしているようだが、少なくとも著者の理論が正しいという根拠は希薄で、現在進行中のわずかな経験則(短期間でのみ合致する事実)に主観的な解釈を述べているだけの説明は、どちらに転んでも言い訳が効く占いや予言と同じ手口であることを理解すべきである(たまたま矛盾しないわずかな例を挙げて自説が正しいとするのはナンセンスである)。繰り返すが、氏の理論では『がんもどき』と『がん』は結果以外からは区別不可能なのだが、そのような馬鹿な理論よりも、区別不能なものは同一(つまりがんもどきは存在しない)と考えるべきではないか?もし、がんもどきが存在するならば、抗癌剤の種類を換えても治療成績は変化しないはずであるが、事実はそうはなっていない。一般の読者には全く勧められない書。
「果たして正気を保てるか」 おすすめ度:
投稿日:2006-08-03
がん手術に対する近藤理論はとても説得的だった。が、さて自分ががん告知を受けたときに、この本の通りに行動できるかどうかというと、いささか自信がない。それはごく普通の人なら同じであろう。自分で考え自分で判断するということは、がん告知された病人に対していささか酷なことであるように思う。しかし、すぐに手術に同意するのは踏みとどまって、一月ほど様子を見るとともに、自分の頭もクールダウンするようにはしたいと思った。
「がんもどき理論、説得力はあるが・・・」 おすすめ度:
投稿日:2005-01-26
約10年前の再刊である。巻頭に今回の文庫化にあたっての近況が述べられているが、基本的に近藤の「がんもどき理論」は以前と変わっていない。曰く、
①がんには、本物のがんとニセモノのがんがある。
②ニセモノのがんでは簡単には死なないから、具合が悪くなるまで放っておいても平気。
③本物のがんは発見した時点で既に手遅れ。手術しても直らない。
この「がんもどき理論」の提唱者、近藤誠は慶応大学病院の現役の先生である。一般の人からすれば雲の上の人、大変な権威である。しかも、がんもどき理論を証明するためのデータ、証拠も本書にはワンサと提示されている。説得力もある。
しかしながら近藤は、医者業界の保守本流からは蛇蝎の如く嫌われている。彼の「がんもどき理論」が、早期検診は無意味、症状がないがんは手術不要、といった結論を導きだす。現在のがん治療の常識を正面から覆すからである。
さて、医学界の論争はさておき、である。
もし自分や肉親ががんになったらどうするのか。手術をしないで放置する、という道を選べるのか。それとも、何もしない不安に耐えかねて、無益かもしれない手術を受けてしまうのか。
いかにインフォームドコンセントがしっかりしていようとも、説明を受ける自分自身に、後悔しない選択をするだけの見識と度胸がなければ、意味がない。死が重いように、手術によって損なわれるかもしれない生もまた重い。近藤の視点は、まさにそこにある。
純粋に医学的な論争は素人にはどちらが本当だかわかりにくいが、近藤説だけを読んで判断するのではなく、是非、反対説も読んでみてほしい。斎藤建という30年のキャリアを持つ病理医が書いた「近藤誠氏のがんもどき理論の誤り」というそのものズバリの本がある。これをお勧めしたい。結局は自分の頭で考えるしかないのではあるが。
「ガン「手術名医」の恐怖とその理由を示す著」 おすすめ度:
投稿日:2004-11-05
ガンの「手術名医」は一体何故恐ろしいのだろうか?
正直言うと、私はこの本の旧著である「がんは切ればなおるのか」も持っていて、尚かつレビューまで書いたわけであるが、旧著の場合は、ガンの手術は何故恐いのかを論述していた本であった。
一方この本は、その旧著「がんは切ればなおるのか」からおよそ9年間の間に、ガンの手術が横行する背景を更に詳しく調べ、その結果解ったガンの「手術名医」の問題を(旧著には無かった写真やグラフも加えて)前面に押し出している。
特に、現実に起きてしまった事例を挙げた時に、それがはっきり現れている。何故かと言うと、旧著の場合はサブタイトルが主にガンのメカニズムと手術の意味を考えさせるものが主流だったのが、この本の場合はガンの「手術名医」がとった行動についてのサブタイトルが多くなっているからである。
本当に、旧著も衝撃的だったが、この本の場合はガンの手術が横行するその背景についても前面に押し出したので、より衝撃を大きくしている。ガンの手術の意味を考えるには、「がんは切ればなおるのか」と同様に、是非読んで欲しいと思う。
「がん治療の実情がわかる!」 おすすめ度:
投稿日:2004-05-04
ガンという言葉の持つ印象は、ここ数年大きく変化してきたと思います。
以前は治る可能性の極めて低い病気という印象でしたが、ここ数年では早
期発見、早期手術によって根治可能な病気という印象に変わったのではな
いでしょうか。
しかしながら、早期発見、早期手術が必ずしも良いとは限らないというこ
とを本書は警告しております。
本書には、早期発見から早期手術を行った場合、手術後の悲惨な状況がわ
かりやすく書かれています。ガン手術がどういうものか、手術で臓器の一
部を失うとはどういうことか。医学的な知識が少ない私でも非常にわかり
やすく読むことが出来ました。
また、手術を行わず、ガンを放置した場合どのような経過をたどるのかと
いう症例や、ガンを手術した場合と、放置した場合で死亡率はどのように
変化するのかといった、興味深い症例も紹介されております。
医学的な知識は専門的でわかりにくいという方に、おすすめするととも
に、日本人の死因の上位を占めるガンについて考える機会を与えてくれる
良書と思います。